「環」をアピールする(左から)大関の長部訓子社長、神戸酒心館の安福武之助社長、岡田本家の岡田洋一代表、富久錦の稲岡敬之社長、田中酒造場の田中智久専務、山陽盃酒造の壺阪雄一専務

環の「白鷺の城」向けに栽培された山田錦の刈り取り作業=2022年10月、西脇市内

環の「大関」向けに育てる山田錦の田植え=2022年6月、加東市内

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更新日: 投稿者: 神戸新聞社

地エネの酒「環」…西宮、姫路の2蔵元が加わり6銘柄に 3年目の本格販売、10月4日から

 「呑(の)んで地域資源を環(めぐ)らせよう」とうたう「地エネの酒 環(めぐる)」の3年目の本格販売が4日、参加蔵元の直売店や県内各地の小売店で始まる。新たに「大関」(西宮市)と「白鷺の城」(田中酒造場=姫路市)の2蔵元が加わり、6銘柄の「環」がそろった。輸入肥料や化石燃料が高騰する中、地域資源を生かした「地肥料」と自然エネルギー「地エネ」の取り組みが広がっている。

 「地エネの酒 環」は、地域資源の新しい循環を創ることで地球環境への負担を減らすローカルSDGsのものづくり「環プロジェクト」の第1弾だ。

 きっかけは、プロジェクトの母体である「地エネと環境の地域デザイン協議会」のメンバーである弓削牧場(神戸市北区)のバイオガス事業の課題だった。

 乳牛の尿やチーズの製造かすを発酵させて得る自然エネルギー「バイオガス」を給湯などに活用する弓削牧場では、副産物の有機肥料「消化液」の農業への普及を模索していた。

 これを受けて、兵庫が誇る酒米山田錦への消化液活用に取り組む「日本酒分科会」が2020年に発足し、3農家が栽培を開始。「福寿」の神戸酒心館(神戸市東灘区)、「盛典」の岡田本家(加古川市)、富久錦(加西市)、「播州一献」の山陽盃酒造(宍粟市)の4蔵元が醸した純米吟醸酒「環」を21年発売した。

 プロジェクトは①食と農のごみ問題解決の道筋を示す②化学肥料から「地肥料」に転換し、農薬に頼らない農法を確立する③「地エネ」普及や地球環境への負担軽減の流れをつくる新しい日本酒文化の発信-を目標としている。

 「環」の山田錦を栽培する生産者は、地域の状況に応じた持続可能な農法の確立に取り組んでいる。

 豊倉町営農組合(加西市)は、冬から水を張って稲株などの有機物の分解を促進する「冬期湛水(たんすい)」の水田に、微生物が豊富な資材として消化液を活用する。

 柔らかく栄養豊富なトロトロ層の土ができたことで3回の耕運作業が不要となった上に無肥料栽培が可能となり、稲作に費やすエネルギーをほぼ半減させた。同組合の岩佐尚宣さんは「古い品種である山田錦には、化学肥料より今の農法が合うように思う」と話す。

 一方、昨年から参加する株式会社「玄米家」は、稲の栄養の中心となる元肥(もとごえ)に消化液を使っている。同社の藤本善仁さんは「昨年は環の田んぼが稲の出来が最も良かったと思う。消化液を投入する時間が短くなれば大規模農家でも取り組みやすい」と評価する。

 このほか、ten(加西市)、中大沢集落改善組合・JA兵庫六甲(神戸市北区)、ツクダ酒店(西脇市)が環向け山田錦を栽培。昨年から箸荷牧場(多可町)も参加し、消化液を農家に供給している。

 大関の長部訓子社長は「地域資源を生かして地球環境の負担を減らす『環プロジェクト』に飲んで参加してほしい」と呼びかける。「環」については「地エネnote」や「地エネ」のホームページへ。

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