デンマークでの暮らしについてトークする、ラウリツ・コーフィクス・シュルスさん(左)と青木加奈子さん

レゴジャパンの小林実加さんによるデンマーク系企業の事例紹介

デンマーク出身の学生ら4人が自国の教育や社会体験などを発表した

報告
更新日: 投稿者: 神戸新聞社

SDGs先進国デンマークに学ぶ、幸せで充実した暮らし ~ウェルビーイング兵庫の実現に向けて~

「なりたい自分」 社会が後押し

 北欧のデンマークは人口600万人ほどの小国ながら、国連の世界幸福度報告で長年トップクラスを維持し、持続可能な開発目標(SDGs)で他国をリードしている。そんな同国をモデルに今後の社会のあり方や暮らし方を若者とともに考える催し「SDGs先進国デンマークに学ぶ、幸せで充実した暮らし~ウェルビーイング兵庫の実現に向けて~」(兵庫県、神戸新聞社主催)が、神戸市中央区の起業プラザひょうごであった。有識者の講演やデンマーク企業による働き方の紹介、デンマーク人留学生や日本の学生の討論・発表があり、企業関係者や県民ら約60人が耳を傾けた。

 基調講演では、京都ノートルダム女子大学准教授の青木加奈子さんが「なぜデンマーク人は幸福度が高いのか」をテーマに話した。
 同国の特徴として、30、40代の労働力率は男女とも80%を超え、共働きが普通だ。日本との決定的な違いは、子育てをする女性もフルタイム、正規雇用で働いていること。1人当たりの国内総生産(GDP)は日本の倍近くに上る。
 税金は非常に高く、収入の約6割を徴収される。一方、学費、医療費、介護サービスはほぼ無料で、失業補償もある。こうした高負担・高福祉社会が、将来の心配が極めて少ない暮らしを実現している。この土台に加え、教育、ジェンダー平等も高い幸福度の要因という。
 教育は「急がせない」のが特徴で、子どもの発達具合に柔軟に対応する。補習や進級を遅らせることをネガティブに考えない。学んだことが仕事に結びつくことも多く、社会に出てから違う分野で新たなキャリアを築きたい人には、何度も学び直しの機会がある。

 続いて、同国出身で大阪大学特任講師のラウリツ・コーフィクス・シュルスさんも参加し、トーク形式で議論を深めた。
 シュルスさんは「転職はデンマークで普通のこと。なりたい自分になる、夢をかなえることを社会が後押ししている」とし、「高い税金も国民は喜んで払う。国は自分たちに還元してくれている」と述べた。
 青木さんは多様な人材を受け入れ、その能力を発揮してもらう「ダイバーシティ&インクルージョン」(D&I)に触れ、「日本では経営用語として使われるが、社会全体に通じる考え方」と指摘。シュルスさんはデンマークで性的少数者を学校の教師として積極的に採用している事例を挙げた。
 同国の暮らしぶりについてシュルスさんは「仕事より趣味や友達、家族と過ごすことを大切にする。仕事は大抵午後4時、金曜は2時に終えて、飲食しながら何時間もおしゃべりするのが普通。『心地良い』『楽しい』時間のことを『ヒュッゲ』と言うが、デンマーク人はその時間、価値観をすごく大事にしている」と話した。

 その後、デンマーク企業の日本法人「レゴジャパン」人事責任者の小林実加さんが登壇した。レゴグループは世界120カ国以上で玩具ブロックを販売。その利益の25%をグループが保有する財団に送り、遊びの効果の研究、未来を創る子どもたちへの寄付や支援をしている。また環境負荷低減へ、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)や植物由来のバイオプラスチックの導入も進めている。
 日本法人の社員は7カ国の外国人を含む60人。男女比はほぼ半々だが、部長以上の役職は女性が6割を占める。会社では「みんなで一緒にやる」「遊びのワクワクする要素を取り入れる」文化が根付く。D&Iは組織を強くするために必要なものとし、「働きやすさは自分たちで作るという意識が徹底されている」と述べた。

 続いてデンマーク出身の学生ら4人が母国の魅力を紹介。高校卒業から大学入学までの半年から数年間、社会体験を積んで自分の適性を見つける「ギャップイヤー」という制度や、学校では行動や体験を通して創造力を養ったり、自分の意見を表現することを学んだりする取り組みを説明した。
 最後に、県内の4大学・2高校から参加した19人が3グループに分かれて、幸せを生む社会や多様性を受け入れるために必要なことなどを話し合った。ギャップイヤーを取ることで、自分にとって価値があるものが何かを追求できる▽リスキリング(学び直し)などにより、仕事と教育のリンケージ(連係)を強める▽教育現場で外国人や障害者らのマイノリティーとの交流を増やす▽社会を変えるために、主張できる人を育てる―など活発な発表があった。

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