【公開講座】株式会社福市 代表取締役 髙津玉枝さん「いつもの買い物に、もう一つの意味を ―フェアトレードが教えてくれる世界のこと―」
▼労働条件、環境負荷… 商品の背景に潜む問題
フェアトレードは途上国の生産者を支援する仕組み。寄付とは異なり、労働の対価として適正な賃金を支払い、現地の人々の生活改善と自立を目指している。私は2006年からフェアトレードとその普及に携わり、阪急百貨店本店ではフェアトレード商品を扱うセレクトショップを12年間運営してきた。手仕事ならではのよさを表現した高品質の手織りショール、プルタブをアップサイクルした長く使えるデザインのバッグなどを、商品開発から生産者と一緒に考えて展開している。
世界の野生脊椎動物の個体群は、この50年間で平均約7割減少した。世界自然保護基金(WWF)などの報告書は、生息地の破壊や気候変動に加え、家畜増加に伴う飼料生産で土地利用が拡大し、自然環境が圧迫されていることを主要因として挙げる。人間の活動が地球の生物構成を大きく変えてしまった形だ。英国では、学生の要望を受けて大学が牛肉提供を停止するなど、「自分たちに何ができるか」を起点とした行動も広がりつつある。
国内のプラスチック生産量は世界有数で、1人当たりのプラスチック包装廃棄量も国際機関の調査で世界2位と多い。日本は廃プラスチックの管理水準が高いとされる一方、主流のサーマルリサイクルは発電などに利用される反面、焼却過程で地球温暖化の要因となる二酸化炭素を相応に排出している。
日常的に着用するコットン製品も多くの問題を抱える。綿花は世界の農地のごく一部で栽培されるが、農薬使用量では高い割合を占め、綿製Tシャツ1枚の生産には浴槽約14杯分の水が必要とされるほど環境負荷が大きい。生産地では劣悪な労働環境や児童労働も指摘されており、低価格を前提とした大量生産の構造がこうした問題を深刻化させている。日本は世界で2番目に奴隷労働品を購入しているというデータもあり、知らずに安く買っている商品の背景にさまざまな問題が潜んでいる。
私たち消費者は無力ではなく、大きな影響力を持っている。例えば「この商品は適正な労働や環境で作られた商品か?」などと売り場で尋ねれば、多くの流通企業がお客さまの声として会社経営に役立てる。環境や労働問題などに配慮する企業へのESG投資、フェアトレードタウン、フェアトレード大学といった地域や大学単位で透明性のあるものを扱う取り組みも広がっている。
近年は途上国だけでなく、国内の小規模生産者を支援するフェアトレードも海外で始まっている。フェアトレードとはみんなが幸せになる流通経路。未知なるものを知るアンテナを張って、子や孫たちの未来によりよい世界を残してほしい。
