ごみ問題が深刻な島根県隠岐の島町の玄関口「西郷港」=2017年9月

不燃・粗大ごみや中身の分からない段ボールなどが散乱する隠岐の島町の処理施設

報告
更新日: 投稿者: 神戸新聞社

公開講座「ごみ問題とSDGsを通じて考える持続可能な地域社会」

関西学院大学教育学部准教授 波江彰彦さん

 10年ほど前から島根県隠岐の島町で、過疎化が進む離島のごみ問題を調査研究し、2018年からは同町の廃棄物減量等推進審議会委員としても活動している。ごみ問題のSDGsと言えば廃棄物や食品ロスを削減する目標12「つくる責任つかう責任」が代表的だが、もっと多角的な視点で考えられる。

 人口約1万3千人の島で問題となっているのが、1人1日当たりのごみ排出量の多さ。22年度は約1400㌘で、全国平均約880㌘を大きく上回る。ごみ処理を島内で完結させる必要があり海岸漂着ごみも多い離島特有の問題があるほか、ごみを段ボール箱に入れて捨てたり、焼却センターに自分で持って行ったりする人が目立つことも原因となっていた。

 そのため町内約60カ所で住民説明会を開くなど丁寧に周知・広報を行い、23年度から有料ポリ袋制度の導入と自己搬入手数料の値上げに踏み切った。効果は絶大で、同年度のごみ排出量は5900㌧と前年から1000㌧以上も減少した。リサイクル率も23年度は9・4%と前年度から3・2㌽上昇し、全国平均(約20%)に及ばないものの改善している。

 島内の高校生が制作した古紙回収ボックスがリサイクル促進に一役買うなど、同町のごみ問題は目標4「質の高い教育をみんなに」や目標11「住み続けられるまちづくりを」にも貢献している。

 次に約20年間もリサイクル率全国1位である鹿児島県大崎町を見てみたい。こちらも人口約1万2千人で高齢化の進む町だ。埋め立て処分場のひっ迫を受けて27種に上る多分別収集をスタートし、生ごみから質の高い完熟堆肥を製造する資源化システムを確立。近年は衛生用品大手メーカーと連携して使用済み紙おむつの再資源化にも取り組み、23年度のリサイクル率は83%に達している。

 同町が掲げるのが、世界で約500兆円の経済効果が期待されているサーキュラーエコノミー(循環経済)の実践。世界各地から視察に訪れた人が同町で宿泊体験し、完熟堆肥で育った地元食材の料理を味わうなど、ごみを極力出さない社会経済を目指して着実に前進している。

 二つの町の事例から、ごみを主軸に持続可能な地域づくりが実践できることが分かる。義務やルールにしばられ過ぎず、生活が豊かになったり経済成長が見込めたりと前向きに楽しむ仕組みを作れるかが成功のカギになる。

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