女性リーダー増で持続的経済へ 関西企業横断の研究会 万博で提言発表
公平な評価導入を 第一人者への支援大切
関西で活躍する女性の経営者や管理職が企業を超えてつながる「大阪サクヤヒメSDGs研究会」が5月下旬、大阪・関西万博のウーマンズパビリオンで、女性活躍に向けた企業への提言を発表した。公平な評価の導入や第一人者への支援などを求める内容で、会の発起人は「持続的な経済を実現するためには、多くの女性リーダーを増やす必要がある」と話す。
大阪商工会議所が2016~20年、企業や団体で活躍する女性リーダーを表彰した「大阪サクヤヒメ表彰」が同研究会の源流だ。毎年40~50人が選ばれ、女性リーダー同士で横のつながりが生まれた。交流を深め、積水ハウス(大阪市)技術管理本部エグゼクティブ・スペシャリストの小谷美樹さんの呼びかけで会を結成した。約50人が定期的に会合や勉強会を開いている。
小谷さんは1988年に積水ハウスに入り、1級建築士として省エネ住宅の開発に従事。女性で2人目の管理職「設計長」に就いた。
2014年には新設されたダイバーシティ推進室の部長に就任。育児休業を取る期間の長短が昇進に影響しない人事制度を導入するなど、改革を進めた。男性管理職のみだった営業部門を含め、社内には管理職に就く女性が急増。「男性と同じ機会や環境が女性にもあれば、能力を発揮できると実感した」と振り返る。
18年に同研究会を設立。国内外で活躍するビジネスリーダーや専門家を交えたシンポジウム「国際女性会議」を19年から毎年開き、ジェンダーギャップ(男女格差)や新たなリーダー像などを考えてきた。
こうしたメンバーの経験が反映された提言は、女性幹部登用の仕組みをつくる▽周囲の能力を引き出し、経営層に意見を届けられる人材の発掘▽本音や共感、ユーモアのある関西らしいウェルビーイングモデルの浸透―などの6項目。実現のため、公平な評価の導入や公的な研修の活用などの具体策を添えた。
大商の担当者は「自主的な活動がこれほど発展するとは驚き」と話す。
小谷さんは「同じ女性リーダーでも、立場や経験は異なるので多様な意見をぶつけ合ってきた。経験から練り上げた提言を関西経済に生かしたい」と語った。
▼国際会議に日本イーライリリー社長登壇 女性の役員比率46%を達成 「創造的な挑戦 多様性必要」
大阪・関西万博のウーマンズパビリオンでは、「大阪サクヤヒメSDGs研究会」による国際女性会議も開かれた。国内外で活躍するビジネスリーダーや専門家による討議には、米国系製薬会社日本イーライリリー(神戸市中央区)のシモーネ・トムセン社長が登壇した。
同会議は今年で6回目。女性活躍に向けたテクノロジーの活用や、(従業員の幸福度を高める)ウェルビーイングの重要性などを議論した。
トムセンさんは「(同社の)役員に占める女性の比率が46%に達している」と紹介。専門チームを立ち上げ、20年前から対象者への研修などを続けてきた成果だと強調した。「当社は女性に多い片頭痛の治療薬などを手がけており、(女性役員の比率が高いことで)より顧客の状況を把握できるようになった。創造的なことを進めるためには、多様性が必要だ」と語った。
討議では、各国の取り組みや制度も紹介された。スイスでは女性のIT技能の習得を後押しする職業訓練制度があり、ドイツでは生成人工知能(AI)が学習する基礎データに男女格差が出ないよう、政府が教育現場や企業に支援しているという。
