工場内で養殖されているヒレナマズ=姫路市別所町佐土、ニチリン姫路工場

ビザ、ビビンパ、ギョウザなどヒレナマズを活用した料理コンテストの作品=姫路市安田1、日本調理製菓専門学校

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更新日: 投稿者: 神戸新聞社

高級店で出せる味!? ナマズのピザ、ビビンバ 兵庫で唯一の陸上養殖、こんな畑違いの企業が挑戦

 自動車用ホース大手のニチリン(姫路市)が、食用ナマズの陸上養殖に取り組んでいる。本業とは全くの畑違いだが、工場内の水槽で累計約2千匹を飼育し、繁殖にも成功。さらには持ち前の技術力を生かし、養殖設備の開発事業にも乗り出す意向だ。地元の調理師学校と協力しナマズを使った料理コンテストも開催。「国内でナマズ養殖の裾野を広げ、食料自給率向上に貢献したい」と構想を描く。

■調理師学校生徒がレシピ考案

 ニチリンが手がけるのは淡水魚のヒレナマズ。同社によると、成長が早く、4~8カ月で出荷できる上、丈夫で病気にかかりにくいなど、養殖に適しているという。高タンパク低カロリーで、東南アジアや米国などではフライや焼き魚などに調理され、家庭料理として浸透している。

 国内では岡山県玉野市にある養殖設備販売「ジャパンマリンポニックス」が、水道水をろ過して循環させ、水槽の中でナマズなどを飼育する循環式の設備を開発し、2020年から販売を始めた。水産庁によると、ヒレナマズの養殖は岡山、静岡、広島、兵庫の4県で実施され、兵庫ではニチリンの1件のみという。

 同社は22年4月、持続可能な開発目標(SDGs)の推進に向け、前田龍一会長(66)の発案で陸上養殖を始めた。経営企画部の佐藤実希さん(34)がジャパン-に着目。魚(とと)と姫路の「姫」から「とと姫さんプロジェクト」と命名し、20トン水槽などを購入した。工場内のボイラーを使って水温を調整。成魚はジャパン-に売却する。

 普段は産業機械を管理する設備課の社員らが飼育を担当し、繁殖にも成功した。ジャパン-と連携し、ナマズの養殖設備や加工など関連機器の開発事業への参入も視野に入れる。食材として浸透する米国での事業展開を検討している。

 前田会長は「持続可能な社会の実現に向け、陸上養殖にはビジネスチャンスがある。中山間地の廃校を活用し、管理のために高齢者を雇用すれば地域活性化にもつながる」と意気込む。

■タンパク質危機救う?

 7月上旬、日本調理製菓専門学校(姫路市)で、ヒレナマズの第2回創作料理コンテストが開かれ、生徒21人が腕を振るった。

 同校がニチリンから調理法の相談を受け、生徒主体のコンテスト開催を提案した。同社が同校へヒレナマズを提供。生徒らは調理法による味の違いや相性のいい調味料を探し、レシピづくりに取り組んできた。

 完成した料理はピザやギョーザ、甘酢あんかけ、ハンバーガーなど。皮や骨まで使うなど廃棄を少なくする工夫も加えた。「臭みがないね」「ナマズって言われないと分からない」「高級料理店でも出せる味だ」-。審査員を務めた前田会長や同社の曽我浩之社長、清元秀泰姫路市長らは次々に感嘆の声を上げた。

 最優秀賞に輝いたのは、同校の内田玲さん(20)が考案した「ナマズビビンバ」。身を酒に浸して臭みを取り、皮を細かく刻んでチップス状にするなどアレンジした。内田さんは「焼いたり、揚げたりすると臭みが消える。味は白身魚に似ていて、いろんな料理に使える」と太鼓判を押す。

 佐藤さんは「地球規模の人口増でタンパク質危機がささやかれている。当社の技術力を生かした陸上養殖が国内や世界中に広がり、課題解決に貢献できればうれしい」と話している。

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