SDGs達成へ国内外の認証取得、労働環境は国際基準 多可の繊維製品メーカー「できることを積み重ね」
「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向け、国内外のさまざまな認証の取得に取り組む企業が兵庫県多可町にある。繊維製品メーカー「ソーイング竹内」。環境に配慮した経営を認証する環境省の「エコアクション21」で金賞に輝き、兵庫県の「ひょうご産業SDGs認証事業」では最上位に選出された。今年6月には、国際基準で労働環境を評価する監査で満点の成績を獲得。竹内裕児社長(56)は「人材確保や企業価値の向上、社員の成長につながれば」と期待する。
民家や田園に囲まれたソーイング竹内本社。応接室には多くの認定証や賞状、盾などが所狭しと並んでいた。「どれも社員が主導的に動いてくれた結果です」と竹内社長は話す。
同社は1982年、竹内氏の父、裕氏が縫製加工会社として設立。99年に大手百貨店のOEM(相手先ブランドによる生産)の受託製造を始めた。イベントグッズなども手がけ、自社工場のほか島根県と福島県に協力工場がある。資本金1千万円、今年10月1日現在の従業員31人。竹内氏は2002年に社長に就いた。
現在の素地ができたのは99年ごろ。バブル経済崩壊後、繊維産業の中心が中国へ移り、仕事が激減した。できた時間を活用し、会社周辺のごみ拾いをしたり、工場内の整理整頓を始めたりした。節約のため、水道やガソリンの使用量も細かく記録するようになった。
そんな折、百貨店からエコバッグの制作依頼がきた。百貨店の担当者から「エコアクション21」の話を聞いたことから、「エコバッグを作るならエコな会社であろう」と認証取得に挑むことにした。社内では「やることが増える」と反対する声が多かったが、竹内社長は社員を説いて回った。
04年に認証を取得。数年たち、売り上げが増えるなど成果が見え始めた。社員の意識も変わり、さまざまな認証取得に自ら動くようになった。22年、布製マスクの生産開始や地元への寄贈が評価され、「エコアクション21」のソーシャル部門で金賞を受賞。23年には、廃棄生地の有効活用などで「ひょうご産業SDGs認証事業」のゴールドステージ企業に選ばれた。
視野は地域や世界へと広がった。Uターンなどの移住者や海外人材の受け入れをにらみ、今春、国際基準に沿った労働環境の整備に挑戦。賃金や労働時間、安全衛生などの改善に努め、6月に英インターテック社が実施する「WCA監査」で満点を獲得した。
最高評価を受けてもなお、会議を週1回開き、会社の課題解決に向けて社員全員で知恵を絞る。取り組みが始まって四半世紀たつが、変わらないのは、「自分たちにできること」を積み重ねていくことという。「大きいことをやりたいが、私たちには勇気も資金もない。でも、小さなことを続ければいずれ大きな実りになる」と竹内社長。「未来を見据えて今やれることをやり、次の世代につなげていきたい」と語った。